放射線汚染から体を護る
放射線物質から体を守るためには、もちろん放射線物質からの被曝を避ける事が一番ですが、それでも、もし、微量であれ被曝した場合、どう対処したらいいのでしょうか?
チェルノブイリ事故後のデータを研究したネイマン博士によると、遺伝子へのダメージによって起こる奇形児の誕生は、事故直後の2年がピークだったという結果が導き出されました。
このことから、被曝後2年間は、できるだけ妊娠しない方が良いかもしれません。また、急性被曝症状が認められない被曝でも、晩曝症状は、被曝後10年くらいしてから出るともいわれています。
放射線汚染が起きてしまうと、汚染地域周辺の人が直接被曝する以外に、放射線物質は土壌に蓄積し、植物内に取り入れられることで、それを食べている動物や人間の体内に入ります。 また、福島第一原子力発電所付近の海水からは、放射性ヨウ素も検出されていることは、海水内の生態系も、放射線汚染されていることに繋がります。
放射線元素は、非放射性の相対物質と構造が似ているため、体に普通吸収される物質と似た性質を持っているのをご存知ですか?
例えば、放射性ストロンチウムは、体にはカルシウムのように認識されることから、骨や歯に吸収されてしまいます。したがって、裏を返せば、体内のカルシウムが充分であれば、体は放射性ストロンチウムを吸収しにくくなり、体が吸収しやすいカルシウムを摂取しておけば、放射性ストロンチウムを体から出すことができるかもしれませんね。
例えば、甲状腺疾患の治療に放射性ヨウ素が使用されることがありますが、この治療をしている間、患者さんはヨウ素を含食べ物を摂取しないように指示されます。それは、体内にヨウ素があり過ぎると、放射性ヨウ素がうまく吸収されないからです。
そしてこれの裏返しが、抗被曝剤としてのヨウ素の使用ということになります。体内にヨウ素が充分あれば、放射性ヨウ素が吸収されにくくなるからです。
この性質を利用すると、食べ物の栄養素によって、放射性物質の内部被曝のダメージを少なくすることが可能になります。つまり…、似ている栄養物質を充分に摂取していれば、その放射性物質の吸収を妨げるとともに、排出を促すことも可能になるというわけです。
セシウムはカリウムに構造上似ているため、体中の細胞に存在するカリウムのレセプター(細胞表面や細胞内に存在し、細胞外からの物質や光を選択的に受容する分子のこと。)に付着するので、カリウム不足にならないように注意しなければなりません。
カリウム不足というのは、イオンのバランスに影響するので、不足すると、肌が乾燥したり、筋肉が弱ったりする症状が出ますが、普通の食生活をしていれば、カリウム不足にはならないはずです。
ほとんどのカリウム不足は、利尿剤でカリウムをわざと体外に出してる場合か、夏場に多くの汗をかき、低カリウム血性を起こす場合です。カリウムは、野菜や肉類、豆類に多く含まれています。
また、カリウムの代謝は、マグネシウムに左右されるので、両方摂取しなければなりません。かぼちゃの種、ひまわりの種、緑の葉野菜、黒豆は、カリウムとマグネシウムを豊富に含んでいます。
また、重曹(炭酸水素ナトリウム)は、ウランと結合して排泄する事により、ウランによる腎臓へのダメージを少なくします。
放射性ヨウ素131は、放射性崩壊によって体から排泄されます。したがって、この期間中、少量の放射性ヨウ素131が、汗や尿となり排泄される可能性が高いので、特に小さい子供がいる家庭では、放射性ヨウ素131の汚染から守る必要があります。
そのため、トイレ、洗面台、シーツや布団、衣服、その他、汚染が考えられるものを、できるだけ洗浄・洗濯することが重要になってきます。放射性ヨウ素131の体内での半減期の目安は、甲状腺では100日、骨では14日、腎臓、脾臓と生殖器官では7日となっています。